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東京高等裁判所 昭和25年(う)1760号 判決

被告人

宮原広

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

前略。

弁護人の控訴趣意について。

記録を調査すると、被告人が、昭和二五年三月九日午後九時四〇分、被告人自宅に於て逮捕され、同月一一日麻生簡易裁判所の逮捕状が発布された事を認め得ると共に、所論の緊急逮捕手続書には、「二十五年三月  日午  時麻布裁判所裁判官宛逮捕ヲ請求シタガ……」との記載があるのみで、右逮捕状請求の日時を空白にしてあるため、その請求の日時を正確に知り得ないこと所論の通りである。従つて、被告人を逮捕後、刑事訴訟法第二一〇条に従つて、直に裁判官に逮捕状を求むる手続をしたかどうか不明という外はない。しかしながら、仮に逮捕後、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなかつたとしても、この逮捕手続の違法がその後の手続全部を違法ならしめるものとはいえない。殊に、原審が起訴状に基いて、審理を進め適法な採証の原理に従つて下した判決そのものが、被告人を逮捕する際に、所論のような難点が存したかも知れないというだけで、不法な判決とはならないし、右逮捕の違法が判決に影響を及ぼすこと明かとはいえない、従つて論旨は理由がない。

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